
群れのなかに
一頭のサイがいる
そのまなざしは ゆく先をとらえ
姿は 力づよく 美しかったが
のどは 潤っているのに 渇き
はらは 満たされているのに 飢え
戦いが あり
気づかいが あり
毎日変わる 風に
こころが 揺れていた
サイは 群れから離れた


束縛のない 静けさの中で
日照りは 皮膚を焼き
雨つぶが 骨にしみ
見えぬ恐怖が 忍び寄る
それでも 一歩
また 一歩と
歩みをつづけた

やがて オアシスがあった
青や緑が ふわりと立っていた
ああ、休もう
そっと 座り
目を とじる
やがて 夜の帳が おりてきた

いったいどれくらい
時が 経ったろう
片目を 薄くひらく
月が こちらを見て
優しく いった
あなたは サイでは ありませんね
どこから 来たのですか
どこへ 行くのですか
わたしは―


朝になって
目を 覚ますと
世界はいろどりをまとい 光っていた

しばらく それを 見つめて
サイは 静かに立ち上がり
あの群れへと
ふたたび 歩きはじめた

